法テラスの審査基準とは?落ちる理由や審査期間を必要書類と共に解説

伊澤文平

監修者伊澤文平弁護士

ベンゴシNOW法律事務所

公開日:2023.12.04

|

最終更新日:2024.02.07

法テラスの審査基準とは?落ちる理由や審査期間を必要書類と共に解説

借金や自己破産といったお悩みを抱え「法テラス」の利用を検討しているあなた。

法テラスを調べていると「審査制」であることに気付いたことでしょう。

法テラスでは無料ないし割安で弁護士を利用できる代わりに、一定の審査があります

ですが、審査基準は何か、どういう場合に落ちるのかや審査期間などが不透明です。

そこで、本記事では法テラスの審査に関して、審査に落ちる理由をはじめ、審査基準や結果が出るまでの期間、審査の必要書類など、法テラスを利用する上で必要なすべての情報わかりやすく解説します。

【この記事でわかること】

  • 法テラスでは、無料相談と弁護士用の立替えの二つのサービスを提供しているところ、それぞれに審査がある(合計2回審査が行われる)

  • 弁護士費用の立替えをしてもらう場合には「書類審査」があり、その意味では、法テラスの審査は厳しい

  • 審査される利用条件は3つあり、その中でも「資力基準」というお金にまつわる基準が大切。経済的に余裕のないことを証明できれば審査を通過して法テラスを利用できる。

  • 審査期間は約2週間から最大で1ヶ月ほどかかるため、急いでいる方には法テラスは向かないが、そうでない方には強くおすすめする

法テラスでの無料相談やそれ以外のお得な法テラスのサービスについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をあわせてご覧ください。

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1.法テラスの審査の全体像

法テラスとは

「法テラス」は、経済的に余裕のない方に対し下記2つのサービスを提供する国が設立した総合案内所です。

【法テラスの2つのサービス】

  • 弁護士への無料相談(30分×3回)

  • 弁護士費用が約半額 & 立て替え払い

各サービスを利用するたびに「法テラスの利用条件」を満たしているかの「審査」がされます。

審査は合計で2回行われるのです。

一口に「法テラスの審査」といっても、どちらの審査を指しているのかはきちんと分けて考えてください。

なぜなら、どちらのサービスを使うかによって、審査項目である「利用条件」はもちろん、審査の方法、難易度や審査期間が異なるからです。

そこでまずは、法テラスが提供するサービス内容をカンタンに確認し、その上で審査の流れを解説します。

1)利用できる法テラスのサービス

法テラスのサービスは、大きく分けて2つあります。

①無料相談が30分×3回(合計90分)できる

「法律相談援助」といわれるサービスで、弁護士に無料で法律相談ができます。

1回30分の相談を、同一の事案について合計3回(90分)まで無料で行えます。

②弁護士費用が約半額 & 立て替え払い

「代理援助・書類作成援助」といわれるサービスで、無料相談の後、弁護士に解決を依頼する際の弁護士費用が相場と比べておおよそ半額になります

また、その弁護士費用のうち、着手金・実費について、法テラスがあなたに代わり担当の弁護士へ立て替え払いまでしてくれます

そのため、あなたは弁護士に依頼する際に支払うべき弁護士費用(着手金・実費)を1円も支払うことなく、弁護士に活動を依頼できるのです。

もっとも、立て替えてもらった後は、法テラスに対し毎月1万円または5,000円の分割払いの形で立替金を返済していくことが必要です。

2)法テラスによる2回の「審査」とその流れ

法テラスによる2回の「審査」とその流れ

法テラスのサービスを利用する際には、まずは弁護士への「無料相談」を申し込み、それが終了した後に「弁護士費用の立て替え」を申し込みます。

無料相談をすっ飛ばしていきなり弁護士費用の立て替えを申し込むことはできません。

無料相談を利用する際に法テラスによる1回目の審査があり、その後の弁護士費用の立て替え申請の際に2回目の審査が行われます。

いずれの審査でも、次に説明する「法テラスの利用条件」をあなたがクリアしているのかが審査されます。

1度目の審査は電話口で確認されるゆるい「口頭審査」で、2度目の審査は書類提出が必要な厳しい「書類審査」になります。

前者は即日審査結果を教えてくれますが、後者は審査が出るまで最低2週間の期間が必要です。

書類審査に合格すれば、「援助開始決定」が出され弁護士費用を立て替えてもらえます。

これに対して、書類審査に落ちた場合、あなたはその不合格の決定に対して文句を2回言うことができます(不服・再審査申立て)。

審査に落ちる主な理由は「資力基準」というお金に関する条件を満たさない場合です。

法テラスは経済的に余裕のない方向けのサービスなので、「経済的に余裕がある」と判断された場合には、法テラスを利用できないのです。

この場合には、法テラスに関係なく無料相談や良心的な価格設定の弁護士費用で対応してくれる民間の弁護士事務所に頼りましょう。

なお、法テラスを利用する場合の手続きの流れについて、より詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。

2.法テラスの審査基準・利用条件

法テラスの審査基準と3つの 利用条件

法テラスを使えば無料で弁護士に相談できたり、弁護士費用を立て替えてもらえるなどのメリットが高いからこそ、その利用には審査があります。

法テラスの審査基準となる「利用条件」は以下の3つです。

【法テラスの審査基準・利用条件】

  1. 資力基準

  2. 民事法律扶助の趣旨

  3. 勝訴の見込み

1回目の審査である弁護士への無料相談を利用する場合には、「1.資力基準」「2.民事法律扶助の趣旨」の2つの利用条件を満たしているかを審査(口頭審査)するにとどまります。

これに対して、2回目の審査である弁護士費用の立て替えを利用する場合には、さらに「3.勝訴の見込み」があるのかまで審査(書類審査)されます。

無料相談と弁護士費用の立て替えを利用する場合とでは、審査される利用条件の数に差があるので注意が必要です。

とはいえ、いずれを利用する場合でも、1番大事な審査基準は「資力基準」というお金にまつわる条件です。

そのため、以下では資力基準を中心に法テラスの審査基準(利用条件)を解説します。

1)資力基準とは

「資力基準」とは、あなたと配偶者の手取り収入・現預金等の額が一定の基準を下回っていることを求める条件です。

法テラスは、経済的に余裕のない方向けのサービスのため、あなたに経済的な余裕があるかを審査するのです。

基準となる手取り月収は、同居の家族の人数と、住まいが東京23区やその他の比較的大きな都市(活保護一級地)なのか、また家賃・ローンを負担しているのかによって異なります。

下記資力基準の表を見て、あなた(いる場合には配偶者も含む)の「手取り」収入と現預金等の金額が基準額を下回っている場合には、資力基準を満たします。

【審査される「資力基準」の内容】

​​東京23区

同居の家族

手取り収入

家賃or住宅ローン

の負担がない場合

手取り収入

家賃or住宅ローン

の負担がある場合

資産要件(預金など)

単身者

20万200円以下

25万3,200円以下

180万円以下

2人家族

27万6,100円以下

34万4,100円以下

250万円以下

3人家族

29万9,200円以下

38万4,200円以下

270万円以下

4人家族

32万8,900円以下

42万900円以下

300万円以下

​​東京23区以外の「生活保護の一級地」

同居の家族

手取り収入

家賃or住宅ローン

の負担がない場合

手取り収入

家賃or住宅ローン

の負担がある場合

資産要件(預金など)

単身者

20万200円以下

24万1,200円以下

180万円以下

2人家族

27万6,100円以下

32万9,100円以下

250万円以下

3人家族

29万9,200円以下

36万5,200円以下

270万円以下

4人家族

32万8,900円以下

39万9,900円以下

300万円以下

上記以外の地区

同居の家族

手取り収入

家賃or住宅ローン

の負担がない場合

手取り収入

家賃or住宅ローン

の負担がある場合

資産要件(預金など)

単身者

18万2000円以下

23万3,000円以下

180万円以下

2人家族

25万1000円以下

30万4,000円以下

250万円以下

3人家族

27万2000円以下

33万8,000円以下

270万円以下

4人家族

29万9000円以下

37万円以下

300万円以下

他方で、あなたのお財布事情をみて、表の金額を上回っている場合には「経済的に余裕がある」と判断され、法テラスのいずれのサービスも利用できません。

資力基準をはじめとした法テラスの利用条件について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

2)民事法律扶助の趣旨に適すること

「民事法律扶助の趣旨に適する」とは、弁護士に依頼する動機が相手への嫌がらせのみを目的とするなど、法テラスがサポートをするにふさわしい案件なのかを見極めるための条件です。

このような目的だけで弁護士に依頼しようとする方にまで、税金で運営される法テラスがサポートをするのは不適切だからです。

3)勝訴の見込みがないとはいえない

「勝訴の見込みがないとはいえない」とは、弁護士が裁判などの手続をとることで紛争解決の見込みがあることを意味します。

そもそも弁護士をつけても解決しようもない案件や、全く勝ち筋が見出せない案件については、勝訴の見込みがないとされます。

以上が、法テラスのサービスを利用する際の審査基準(利用条件)です。

これらを満たす場合には、弁護士への無料相談や弁護士費用の立て替えをしてもらうことができます。

3.審査方法│審査はゆるい?厳しい?

審査方法やその難易度については、弁護士への無料相談を利用する場合と、その後の弁護士費用の立て替えを利用する場合とで異なります。

1)弁護士への無料相談:審査はゆるい

弁護士への無料相談を利用するだけなら、法テラスによる審査は「口頭審査」といって電話口で利用条件を聞き取られるだけの比較的ゆるい審査になります。

「月収は手取りでいくらですか?」「貯金はどのくらいありますか?」といった質問をされるので、できる限り正確に答えてください。

2)弁護士費用の立て替え:審査は厳しい

これに対して、無料相談が終わった後に弁護士費用の立替えまで希望する場合、法テラスによる審査は「書類審査」のため、厳しい審査になります。

担当弁護士の指示に従い、あなたは「必要書類」を集めてください。

4.審査期間│審査方法ごとに違う

審査が出るまでの期間は、無料相談を申し込む場合の「口頭審査」と、弁護士費用の立替え依頼する場合の「書類審査」とで異なります。

1)口頭審査の場合:即日

弁護士への無料相談を利用するだけなら、電話での利用申し込みの際に口頭で審査され、即日に電話口で審査結果を教えてくれます

法テラスを利用できる場合には、日程調整と相談場所の予約を行います。

その後、決められた日に弁護士との無料相談が行われます。

2)書類審査の場合:最短2週間〜1ヶ月

弁護士費用の立替えを申請する場合には、改めて資力基準を中心に書類審査が行われます。

法テラスの結果が出るまでの審査期間は、利用申し込み後おおむね2週間です。

ただし、以下の3つの理由で、審査結果が出るまで1ヶ月程度かかることもあります。

【書類審査に1ヶ月かかる場合の例】

  • 必要書類の不備やもれ抜け

  • 申請が混雑している

  • お盆やお正月・祝日などの期間をはさむ場合

特に、担当の弁護士が法テラスの申請手続きに慣れていない場合、あなたが用意すべき必要書類への指示が不十分になりがちです。

その結果、法テラスへ提出した必要書類にもれ抜けがあり、審査結果が出るまで遅くなることがあります。

5.法テラスの審査の必要書類とは

法テラスの必要書類

法テラスの審査で必要な書類は大きく分けると5種類あります。

【書類審査の5つの必要書類】

  • 収入を証明する書類

  • 資力申告書

  • 住民票の写し(世帯主全員※マイナンバーなし)

  • 分割返済に使う口座に関する書類

  • 事案の「勝訴の見込み」を判断するための書類

1)収入を証明する書類

まず「収入を証明する書類」が必要です。

あなたと配偶者の手取り収入(ないし所得)の金額が「資力基準」を下回っていることを証明するためです。

必要な書類は、あなたの「働き方」がサラリーマン・個人事業主なのか、あるいは生活保護受給者なのか等によって異なっています

【収入を証明する書類の一例】

  • 給与明細(直近2か月分)

  • 確定申告書の写し(直近1年分)

  • 生活保護受給証明書

  • 非課税証明書(直近のもの)

  • 年金証書(直近のもの)

2)資力申告書

生活保護を受給している方を除き、主にあなたと配偶者の現預金などの”資産”がいくらなのかを説明する「資力申告書」が必要です。

以下のリンクから資力申告書の用紙をプリントアウトし、記入の上提出してください。

→「資力申告書」はこちら

資力申告書に記入すべき項目のうち、重要なものは現預金などの「資産」を証明する部分です。

配偶者(内縁を含む)がいる場合には、あなただけでなく配偶者の資産についても記入する必要があります。

【資力申告書に記入すべき「資産」の種類】

  • 現金・預貯金の金額

  • 自宅以外の不動産の金額

  • 生命保険の解約返戻金見込額

  • 有価証券の金額

3)住民票の写し(世帯主全員※マイナンバーなし)

世帯全員が書かれた「住民票」が必要です。

以下の記載がされている住民票に限るので、役所で住民票を取得する際には必ず下記項目を記載してもらうよう窓口で伝えてください。

【住民票の記載事項】

  • 世帯全員の氏名

  • 本籍

  • 筆頭者

  • 続柄

また、マイナンバーの記載はしないでください。

4)分割返済に使う口座に関する書類

法テラスに立て替えてもらう弁護士費用については、分割払いの形で毎月法テラスへ返済をしていく必要があります。

支払い方法が銀行口座からの自動引き落としになるため、自動引き落としの依頼書と口座番号などが分かる以下の書類を用意してください。

【分割返済に使う口座に関する書類】

  • 「自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書」の写し

  • 口座情報が確認できる書類の写しのうち、下記いずれか1点

    • ・通帳の写し

    • ・キャッシュカードの写し

    • ・Web口座画面の写し

「自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書」については、下記リンクから用紙をダウンロードして記入し提出してください。

記入例を見ながら作成しましょう。

5)事案の「勝訴の見込み」を判断するための書類(原則、任意提出)

弁護士をつけて裁判等を起こした際に「勝訴の見込みがあるのか」を法テラス側が見極めるための書類を求められることがあります。

建前上では任意ですが、多くの場合提出は必須です。

特に、借金・債務整理に関する事案については「債務一覧表」の提出は”必須”となります。

「債務一覧表」は、誰から・いつ・いくら借金して、残りいくらなのか等を記入するリストです。

→「債務一覧表」はこちら

債務一覧表の記入例・書き方のポイント

最初の借入日など、忘れてしまった項目があれば、借りた金融機関に問い合わせをして確認してください。

【勝訴の見込みを判断するための書類】

事案の「勝訴の見込み」を判断するための書類

「*」のみ必須資料。

事案の内容

必要書類

多重債務事件

(自己破産・任意整理

・民事再生)

*債務一覧表

交通事故事件

・交通事故証明書

・診断書

医療過誤事件

診断書

被告事件など

訴状の写し

離婚事件

*戸籍謄本

(あなたが被告の場

合、訴状の提出があれ

ば戸籍謄本は不要)

不動産、保全事件など

・固定資産評価証明書

・不動産全部事項証明書

(オンラインによる

「不動産登記情報」でも可)

遺産分割事件

戸籍謄本

6)審査の必要書類まとめ

これまでの説明を踏まえ、弁護士費用の立替えをしてもらうための必要書類を、あなたの「働き方」に応じて表にまとめました。

以下の表のうち、あなたの働き方に該当する部分を見て、必要書類を確認してください。

なお、法テラスを利用する前の段階でこれらの書類を全部用意しておく必要はないのでご安心ください。

事前に取得できる書類は集めておき、わからない部分があったら担当の弁護士の指示に従えば問題ありません。

 【法テラスの審査で必要な書類の一覧】

対象者

「資力」を証明する書類

※マイナンバーの記載がないもの

※配偶者(内縁含む)がいる場合は、配偶者の資料も必要。

ただし、配偶者が相手方の場合は不要。

社員、パート・アルバイト

下記のうち、いずれか1点※1

・給与明細(直近2か月分)

・賞与明細(直近のもの)

・源泉徴収票(直近のもの)

・課税(所得)証明書 (直近のもの)

・非課税(所得)証明書 (直近のもの)

自営業(個人事業主)

下記のうち、いずれか1点※1

・確定申告書の写し(直近1年分)

 ※収受印があるもの。

 ※e-Taxの場合は受付結果(受信通知)の添付

・課税証明書

生活保護受給者※2

下記のうち、いずれか1点

・生活保護受給証明書

(申込みから3か月以内に発行)

・生活保護(開始・変更)決定書

(申込みから3か月以内に発行)

・生活保護受給者証(現状を反映しているもの)

無職

・非課税(所得)証明書(直近のもの)※1

・雇用保険の受給がある場合、下記のうち1点

 ┝雇用保険受給者証明書

 ┝離職票

 ┝解雇通知

年金受給者

下記のうち、いずれか1点※1

・年金振込通知書(直近のもの)

・年金支払通知書 (直近のもの)

・年金証書(直近のもの)

※いずれも、基礎年金番号の記載がないもの

全員に共通

・資力申告書  ※生活保護受給者は不要

・住民票(本籍・筆頭者・続柄の記載があり、世帯全員分)

 ※世帯人数が1名の場合、世帯全員分の記載があれば

「続柄」の記載がなくても可。

 ※外国人は、住民票に代えて在留カードでも可

・自動払込利用申込書兼預金口座振替依頼書の写し※3

・口座情報が確認できる書類の写しのうち、下記いずれか1点※3

 ┝通帳の写し(キャッシュカードの写し)

 ┝Web口座画面の写し

・非居住用不動産をお持ちの場合、下記のうちいずれか1点

 ┝固定資産評価証明書

 ┝固定資産税納税通知書

 ※いずれの場合も、追加で不動産全部事

項証明書も必要な場合あり

  • ※1【資力を証明する資料】:提出することが困難な事情がある場合には、担当弁護士が作成する「報告書」や、申込者の資力を確認できるその他の書面の提出をもって代えることができます。

  • ※2【生活保護受給中の方】:世帯主(申込者と異なる)の氏名のみ記載されている資料は、申込者本人が生活保護を受給していることを裏付ける資料とはなりません。あなたの氏名が記載されている資料の提出が必要です。

  • ※3【法テラスへの分割返済】:提出することが困難な特別の事情があるときは、支払方法登録届又は担当弁護士からの「報告書」の提出をもって代えることができます。

【勝訴の見込みを判断するための書類】

事案の「勝訴の見込み」を判断するための書類

「*」のみ必須資料。

事案の内容

必要書類

多重債務事件

(自己破産・任意整理

・民事再生)

*債務一覧表

交通事故事件

・交通事故証明書

・診断書

医療過誤事件

診断書

被告事件など

訴状の写し

離婚事件

*戸籍謄本

(あなたが被告の場

合、訴状の提出があれ

ば戸籍謄本は不要)

不動産、保全事件など

・固定資産評価証明書

・不動産全部事項証明書

(オンラインによる

「不動産登記情報」でも可)

遺産分割事件

戸籍謄本

6.法テラスの書類審査に落ちる理由と落ちたときの対処法

法テラスの審査に落ちる理由と対処法

法テラスのサービスのうち、弁護士への無料相談を利用する場合の審査については、あまり落ちることはありません。

利用条件を電話口でカンタンに確認する比較的ゆるい口頭審査だからです。

これに対して、弁護士費用の立て替えを利用する場合の審査については、厳格な「書類審査」のため、利用条件を満たさず落ちてしまうことがあります

ですが、一度落ちても再チャレンジできます。

また、よくある「審査に落ちる理由」を知ることで、書類審査を通過する確率を上げられます。

そこで以下では、書類審査に落ちる理由とその対処法をわかりやすく解説します。

【よくある法テラスの審査に落ちる理由】

  • 資力基準を上回ってしまう

  • 法テラスが支援するのにふさわしくない案件

  • 勝訴の見込みが薄い案件

  • 審査中に裁判が終了した

1)資力基準を上回ってしまう

法テラスの「収入要件」

書類審査に落ちる最大の理由は、あなたのお財布事情を見てみたら「資力基準」が求める基準値を超えてしまっていた場合です。

法テラスによる弁護士費用の立替えは、あくまでもお金がない方のみが対象です。

それなりの収入と資産があるなら、自分で頑張って弁護士費用を捻出してくださいと判断されてしまうのです。

資力基準は、あなた(と配偶者)の手取り収入の金額をチェックする「収入要件」と、現預金等をチェックする「資産要件」の二つがあります。

改めて、収入要件と資産要件の内容をおさらいします。

①収入要件を上回ってしまう

収入要件は、まず「手取り」の月収がいくらなのか見てください。

あなたが単身者であれば、あなただけの月収でよいですが、配偶者(夫・妻)がいればその方の収入も合算します。

その上で、あなたと「同居の家族」の人数を確認します。

子なし夫婦なら「2人家族」、子一人なら「3人家族」といった具合です。

次に、あなたの「お住まい」が東京23区などの大都市かをチェックします。

大都市であれば、基準額は引き上がりますが、それ以外の地域では基準額は低いです。

例えば、あなたが単身者で大都市でない地域にある実家に住んでいる場合、手取り月収が18万2,000円以下でないと審査に落ちます。

最後に、あなたが「家賃や持ち家のローンを支払っているか」をチェックします。

支払っているなら基準額が引き上がります。

例えば、先の例であなたが実家近くにマンションを借りて住んでいた場合、「家賃を支払っている」として、基準額は18万2,000円から23万3,000円に引き上がります。

【書類審査で見られる「収入要件」】

同居

の家族

お住まい

手取り収入(月収)

あなたが家賃・住宅ローンを

”支払っているか否か”

支払ってない

支払ってる

単身

東京23区

20万200円以下

25万3,200円以下

生活保護1級地

20万200円以下

24万1,200円以下

それ以外の地域

18万2,000円以下

23万3,000円以下

2人家族

東京23区

27万6,100円以下

34万4,100円以下

生活保護1級地

27万6,100円以下

32万9,100円以下

それ以外の地域

25万1,000円以下

30万4,000円以下

3人家族

東京23区

29万9,200円以下

38万4,200円以下

生活保護1級地

29万9,200円以下

36万5,200円以下

それ以外の地域

27万2,000円以下

33万8,000円以下

4人家族

東京23区

32万8,900円以下

42万900円以下

生活保護1級地

32万8,900円以下

39万9,900円以下

それ以外の地域

29万9,000円以下

37万円以下

5人家族

以上

家族が1人増えるごとに30,000円( 33,000円 )を加算

より正確に収入要件をクリアしているかを確認したい方は、「収入要件について(所得制限)」をご覧ください。

②資産要件を上回ってしまう

法テラスの書類審査で求めれる「資産要件」

資産要件は、単身者で180万円、2人家族で250万円、3人家族で270万円、4人家族以上で300万円です。

この金額を判断する「資産」の範囲は、以下の通りです。

【資産要件の判断対象となる「資産」】

  • 現金・預貯金の金額

  • 自宅以外の不動産の金額

  • 生命保険の解約返戻金見込額

  • 有価証券の金額

ここでいう「資産」は、書類審査の場合、現金・預貯金だけでなく、ご自宅以外の不動産や生命保険の解約返戻金なども含めて計算するところがポイントです。

現預金は少なく生活が苦しく感じられても、これらの財産を含めると意外にも資産要件の基準額を超えてしまい、審査に落ちるということがよくあります。

【書類審査で見られる「資産要件」】

同居の家族※

現預金等の金額

単身

180万円以下

2人家族

250万円以下

3人家族

270万円以下

4人家族以上

300万円以下

2)法テラスが支援するのにふさわしくない案件

法テラスの書類審査では、あなたの弁護士に依頼する目的が「民事法律扶助の趣旨」に合致しているのかをチェックします。

法テラスの役目は、お金はないがどうしても弁護士をつけて解決しないと生活がままならないという切実な状況の方をサポートすることです。

そのため、依頼目的が単なる嫌がらせや報復感情を満たすためだけにある場合や、売名・宣伝目的にある場合には、審査に落ちます。

3)勝訴の見込みが薄い場合

仮に弁護士をつけて裁判をしても勝訴の見込みが薄い案件と判断された場合、審査に落ちます。

これは法テラス側のお財布事情に関係しています。

法テラスは、あなたに代わり弁護士費用を立替払いしますが、立て替えた分のお金(立替金)はきっちり回収したいと考えています。

ところが、裁判を起こしても勝てないような案件の場合、相手方からお金をもらうことができず、立替金を回収することが難しくなるからです。

勝訴の見込みがあることを示す上でのポイントは「証拠」がどのくらいあるか、あなたの言っていることがたしからしいかです。

必要書類の中に、例えば交通事故なら「交通事故証明書」があるのは、交通事故が起きたこと自体間違いなければ、少なくとも全負けはないだろうと判断できるからです。

4)審査中に裁判が終了した場合

すでにあなたが訴えられていて、書類審査をしている間に裁判が終了してしまった場合にも審査に落ちます。

これは審査に落ちるというより、裁判が終わってしまっては裁判費用をサポートする法テラスのそもそもの目的を達成できないからです。

法テラスの審査結果が出るまでの期間は、最短でも2週間かかります。

その間にも裁判はどんどん進行していきます。

借金でお悩みの事案で、すでに多くの金融機関から支払いを求めて訴えられており、審査結果を待っている間に、差押えが行われてしまうことがよくあります。

このように裁判が進行中の場合、審査に落ちる・落ちないの前に、裁判が終わってしまう可能性があります。

5)書類審査に落ちたときの対処法

弁護士費用の立替え申請に対し、利用条件を満たさないとして、書類審査で落ちた場合、どうすればいいのでしょうか?

審査に落ちた時の対処法は2つあります。

【審査に落ちた時の2つの対処法】

  • 不服申立て等

  • 民間の弁護士事務所を利用する

書類審査に落ちたという結論に納得できない場合、あなたは2回文句をいうことができます。

1回目の手続きを「不服申立て」、2回目の手続きを「再審査申立て」といいます。

ただ、手続きとしては文句をいう機会が用意されていますが、利用条件を満たさないという判断が覆ることは実務上多くありません。

そのため、次の「民間の法律事務所を利用する」という選択肢の方がおすすめです

まず、初回相談を無料にしている弁護士事務所は最近とても増えています。

特に借金の事案であれば、弁護士費用の分割払いまで認めてくれる事務所も少なくありません。

そのため、審査に落ちたからといって悲観せず、ネットで無料相談や分割払いを認めてくれる弁護士事務所を探しましょう。

よくある質問

法テラスの審査に関してよくある質問をまとめました。

Q

自分は無職で収入はないが、同居する両親に収入がある場合、法テラスの審査は通りますか?

本人が無職で収入がないのであれば、たとえ両親に収入があっても、収入要件は満たします。ただし、法テラスの審査を通過できるかについては、あなたに現預金などの「資産」がいくらあるかによって異なります。「資産」が下記表の金額以下であれば(あなたは「単身者」扱い)、資力基準を満たし法テラスを利用できます。

【資産要件】

同居の家族

現預金等の金額

単身

180万円以下

2人家族

250万円以下

3人家族

270万円以下

4人家族以上

300万円以下

Q

法テラスの審査が通ったらどうなるの?

法テラスの審査を通ったら弁護士費用の立て替え手続きに入ります。まずは、あなた・法テラス・担当弁護士との間で「三者間契約契約書」を締結します。その後、三者間契約書と立替金を分割払いするための「自動口座引き落としの依頼書(原本)」を法テラスへ提出します。それらの書類を法テラスが受理した時点から約1ヶ月後に、弁護士費用の立て替え払いが行われます。

まとめ

法テラスの「審査」と一口に言っても、無料相談を利用する場合の口頭審査と、その後の弁護士費用の立替え申請に対する書類審査の2種類の審査があります。

いずれを利用する場合でも法テラスの利用条件、特に「資力基準」を満たしているのかが問われます。

口頭審査は、電話口で資力基準を確認する比較的ゆるい審査ですが、弁護士費用の立替え申請についての書類審査は、厳しい審査になります。

書類審査では、あなた(いる場合には配偶者も含む)の手取り収入と現預金等の資産が一定の基準を下回っているかについて、必要書類と付き合わせて厳格に審査されます。

審査が出るまでの期間は原則2週間ですが、書類の不備や祝祭日をまたぐような場合には、1ヶ月ほどかかることがあります。

仮に審査に落ちた場合、悲観する必要はありません。

法テラスの決定に対して2回文句を言うための「不服申立て・再審査申立て」の手続きが用意されています。

審査に落ちた時は、不服申立ての手続きとは別に、民間の弁護士事務所を利用することを検討してください。

なぜなら、初回相談を無料にしている弁護士事務所は増えていますし、弁護士費用の分割払いまで認めてくれる事務所もあるからです。

以上が法テラスの審査に関するまとめです。

法テラスをこれから使う方も、すでに審査に落ちてしまった方も、本記事を読むことで法テラスや民間の弁護士事務所を有効活用しましょう。

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