弁護士が嫌がる6つのこと・嫌がる相手や困る依頼者の特徴6選を解説

伊澤文平

監修者伊澤文平弁護士

ベンゴシNOW法律事務所

公開日:2024.02.06

弁護士が嫌がる6つのこと・嫌がる相手や困る依頼者の特徴6選を解説

離婚や借金など、自分では解決できない法律トラブルがあって、弁護士への依頼を考えている方。

弁護士費用・注意点などについて軽く下調べしているうちに「弁護士が嫌がること」というワードを目にした方も多いのではないでしょうか。

弁護士も人間であり、ビジネスマンでもあるため、「嫌がること」があるのは事実です。

弁護士に嫌がられると、弁護士と良好な「信頼関係」が築けず、依頼を断られたり、途中に辞任されたりといったデメリットが生じます。

したがって、弁護士との間に良い信頼関係を築くために「弁護士が嫌がること」を知っておくことには、大きな意味があります。

そこで本記事では、弁護士が嫌がること、嫌がられないためのポイント、嫌がられた時の対処法をどこよりも詳しく解説していきます。

これから弁護士への依頼を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

【この記事でわかること】

  • 弁護士が嫌がることは「相談内容・状況」と「相談相手(依頼者)」に分けられる

  • 特に弁護士に嫌がられやすいのは「相談相手(依頼者)」に問題があるケース。

    • ・感情的で、冷静に話ができない

    • ・弁護士への態度が横柄

    • ・無理な要求をする、など

  • 弁護士に嫌がられないためには、「自分の主張が全て実現すると思わない」「目の前の弁護士に最低限の敬意と信頼をもって、冷静に対話する」ことなどが大切!

  • 弁護士に嫌がられる要素を極力なくすことで、弁護士と良い信頼関係ができ、円滑にトラブル解決しやすくなる!

なお、弁護士に「嫌がられない」ためにも不可欠な、無料相談する際に注意点や準備については、以下の記事をあわせてご覧ください。

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1.弁護士が嫌がることは「相談内容・状況」と「相談相手」に分けられる

弁護士が嫌がること

まずはじめに、弁護士が相談や依頼を「嫌がる」ことがあるのかといえば、確かにあります。

そもそも弁護士は、相談相手の依頼に必ず応じなければいけない、という「受任義務」はありません。

言い換えれば、弁護士にも引き受ける仕事を選ぶ権利があるということです。

そのため、弁護士が嫌がることがあれば、相談を拒否したり、依頼を断ることがあります。

弁護士が嫌がることとして挙げられる要因は、大きく「相談内容・状況」と「相談相手(依頼者)」に分けられます。

「相談内容・状況」と「相談相手(依頼者)」のどちらに問題があるかで、対処法も違うため、このように分けて理解するとよいでしょう。

以下の項目からは、「相談内容・状況」と「相談相手(依頼者)」に分けて、それぞれの要因をさらに具体的に見ていきます。

2.弁護士が嫌がる相談内容・困る状況6選

弁護士が嫌がる相談内容・困る状況6選

弁護士が嫌がる要因の1つは、弁護士にとって好ましくない「相談内容」や、「状況・タイミング」であることです。

【弁護士が嫌がる相談内容・状況】

  • 業務の範囲外の相談内容

  • 「費用倒れ」する可能性がある

  • 弁護士が負ける案件

  • 弁護士の手が空いていない

  • 利益相反にあたる

  • 法テラスの制度を利用した相談

それぞれの要素について、詳しく解説していきます。

1)業務の範囲外の相談内容

1つ目は、その弁護士・法律事務所の業務の範囲外の相談内容だったケースです。

というのも、弁護士といってもすべての法律問題に精通しているわけではありません。

弁護士ごとに、あるいは事務所ごとに、得意・不得意の分野があります。中には相談内容を限定して受け付けているところも少なくありません。

例えば、離婚問題に特化して依頼を受け付けている法律事務所に、医療事故の相談を持ち込むと、弁護士は困ってしまいます。

得意ではない分野の依頼を受けると、弁護士にとって負担が大きいだけでなく、依頼者であるあなたにとってもメリットがありません。

法律事務所のホームページには得意・不得意分野が書かれているので、それを事前にチェックしましょう。

2)「費用倒れ」する可能性がある

「費用倒れ」とは、弁護士費用が、弁護士のサポートによって得られる経済的利益を上回ってしまう状態をいいます。

例えば、離婚相談で、弁護士の着手金よりも獲得きる慰謝料が少なくなるケースなどが考えられます。

費用倒れのイメージ

お金を取りたいから弁護士に頼んだはずなのに、払うお金の方が高くて損をしてしまっていることがわかります(上図参照)。

「お金が欲しい」という目的で、「費用倒れ」になると言われた場合は弁護士に依頼することを考え直しましょう。

ちなみに不倫慰謝料の例でいえば、不倫の「証拠」が充実すれば、見込める慰謝料の金額が上がり、費用倒れを回避できる場合もあります。

弁護士に「費用倒れになる」と言われた場合は、「費用倒れを回避できる状況はあり得るか」、「そのために何をすればよいか」といったアドバイスも聞いてみてください。

3)弁護士が負ける案件・勝ち目のない裁判

弁護士が負ける案件・勝ち目のない裁判についても、弁護士は受任を嫌がります。

弁護士の報酬の大部分は「成功報酬」です。

裁判に負けたり、負けないまでも示談交渉をしても不利な条件でしか決着できないのであれば、弁護士に得がないからです。

負ける案件・勝ち目のない裁判とは、「あなたの主張に理由がない、または、主張を裏付ける証拠がない場合」です。

不倫の慰謝料請求の事案を例にすると、手をつないだのみで肉体関係がなく、法的に不倫があったとはいえないのが「主張に理由がない」場合です。

他方で、肉体関係はあったと思われるが、それを示すLINEなどの物的証拠がない事案なら、「主張を裏付ける証拠がない」場合にあたります。

実務で多いのは、後者の十分な「証拠」が手元にない場合です。

証拠なしに裁判をすると「あなたの感想ですよね」と裁判官に一蹴されるのがオチなので、弁護士は受任を嫌がります。

手元の証拠で十分かは、法律家でないと見極めるのが難しいので、相談の中で弁護士に聞くほかありません。

4)利益相反にあたる

あなたとトラブルになっている相手がすでに同じ弁護士に何らかの依頼をしている場合、残念ながら相談や依頼を断られてしまいます。

争っている者同士の両方をサポートすることは、「利益相反」と呼ばれ、弁護士は利益相反になる行為は禁じられているからです。

次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。-

一相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件

引用元:弁護士職務基本規程第27条1号

よくある例を出せば、離婚問題で妻側の弁護を引き受けた場合、その夫からは離婚相談を受けられません。

「こんなことは滅多にないでしょ」と感じるかもしれませんが、意外に頻繁に起きます。

なぜなら、この利益相反は、弁護士個人だけでなく同じ事務所に所属する他の弁護士でも同様に適用されるからです。

担当の弁護士が相手方からの相談を受けていなくとも、同じ事務所に所属する他の弁護士が相談をすでに受けている場合、利益相反にあたり、あなたは相談や依頼ができなくなるのです。

この点は法律事務所への電話予約の段階で、氏名を伝えると判明することが多いです。

電話予約の際には、きちんと氏名と相談の概要を伝えましょう。

5)法テラスの制度を利用した相談

弁護士の中には、法テラスと契約した「法テラス契約弁護士」がいます。

法テラス契約弁護士には、「法テラスの制度」を利用した無料相談ができるので、多くの方に使われています。

しかし、中には法テラスの制度を使った相談を嫌がる弁護士もいます

なぜなら、法テラスの制度を使った相談は、弁護士のもらえる報酬が少なく、依頼を受ける際の手続きが煩雑といったデメリットがあるからです。

とはいえ、法テラス契約弁護士であれば、法テラスの制度を使った相談が来ることが最初からわかっているはずですし、嫌がるのは本来お門違いです。

法テラスの制度を使って無料相談をしたい方は、まず法律事務所に電話で問い合わせ、「法テラスを使って無料相談したい」旨を伝えてみてください。

弁護士が嫌がるような態度であれば、また別の弁護士に当たってみるという心づもりでいるとよいでしょう。

なお、法テラスの制度を使う依頼者に対する弁護士の本音、評判などについて、以下の記事で詳しく解説しています。

6)弁護士の手が空いていない

タイミング悪く弁護士の手が空いていない場合、相談や依頼を受けることを弁護士は嫌がります。

弁護士は通常、いくつかの案件を掛け持ち、同時進行で業務を進めています。

すでに手一杯の案件を抱えている場合、新しい依頼に割く時間がないため、断られてしまうことがあるのです。

これは相談の電話予約をしてみないとわからず、仮に断られたら、違う事務所に問い合わせるを繰り返すしかありません。

3.弁護士が嫌がる相手・困る依頼者6選

弁護士が嫌がる相手・困る依頼者6選

弁護士が相談や依頼を嫌がる原因は、相談内容ではなく「依頼者」にあるケースも多いです。

弁護士も人間なので、嫌な相手のために仕事をすることにモチベーションは保てません。

また、依頼者と信頼関係が築けるかは、トラブルが解決できるか、裁判に勝てるか、といった「結果」にも大きな影響が出ます。

そのため、相談内容よりも、相手(依頼者)に問題がないかどうかの方を重視している弁護士も多いです。

【弁護士が嫌がる・困る相手(依頼者)】

  • 予約なしでいきなり事務所に訪問する

  • 感情的で、冷静に話ができない

  • 弁護士を信頼していない・態度が横柄

  • 無理な要求をする

  • 無料相談だけを利用しようとしている

  • 弁護士費用を値切ろうとする

とはいえ、上記のような特徴が少し見え隠れしているからといって、弁護士が強く嫌がるわけではありません。

弁護士が嫌がるのはあくまで上記のような性質を強く持つ、いわゆる「モンスター依頼者」のような人だけです。

初めて弁護士に相談しにいく人などは、慣れないことで戸惑ったりすることは弁護士もよく承知しているので、ご安心ください。

1)予約なしでいきなり事務所に訪問する

ほとんどの法律事務所で、弁護士への相談は事前予約制となっています。

そのため、予約なしでいきなり事務所に訪問した場合、弁護士が快く相談にのってくれる可能性はかなり低いです。

これは弁護士が感情的に嫌がるというより「困る」という表現が合うでしょう。

というのも、相談の予約がない時間、弁護士は裁判や調停で法廷に出廷したり、手続き等で第三者機関に出かける予定を控えている場合が多いからです。

新規の依頼者に対する時間を確保していない時間に訪問されると、予定が狂ってしまうため、弁護士は困ってしまうのです。

また、上記のような事情を考慮せず、「何で予約がないとダメなの?」などと不満な態度をとる相手は、より強く嫌がられることはいうまでもありません。

2)感情的で、冷静に話ができない

感情的で、冷静に対話ができない依頼者も、弁護士から嫌がられるケースが多いです。

離婚の相談などで、紛争相手(妻または夫)に対する怒りを弁護士にぶつける依頼者がよくみられます。

感情的で冷静な話し合いができない人には、弁護士が気を使いつつ、依頼者をなだめながら話す必要があり、コミュニケーションの負担が大きくなります。

また、感情的な相手は、弁護士からのアドバイスや中立的な見解を受け入れにくく、「何がなんでも自分の主張を通そうとする」傾向があります。

上記のような人は、最善の解決策に向けて円滑に協力していくことが難しいため、弁護士に嫌がられてしまうのです。

3)弁護士を信頼していない・態度が横柄

弁護士を信頼していなかったり、態度が横柄な依頼者も、弁護士は嫌がります。

弁護士の見解は聞いておきたいが、具体的なアドバイスには聞く耳を持たず、自分の主張をいっさい譲る気がない人などがこれに該当します。

また、弁護士への最低限の「敬意」を感じられず、コミュニケーションに難ありの方も嫌がられる傾向にあります。

「客は神様」の精神で振る舞う人や、弁護士の言うことを曲解して受け取るような方は嫌がられます。

4)無理な要求をする

弁護士に「無理をいう」依頼者も、弁護士は嫌がります。

例えば、以下のような要求は、弁護士でも実現できない「無理な相談」です。

【例:弁護士への無理な要求】

  • 離婚:単なる性格の不一致で法的には離婚ができないのに離婚したい

  • 不貞慰謝料:証拠はいっさい無いのに、不倫の慰謝料を払わせたい

  • 交通事故:示談金の相場が100万円のところを、1,000万円にしてほしい

  • 相続:「別の人に相続する」という内容の遺書があるのに、自分が全部相続したい

  • 近所トラブル:苦情を言われて腹が立ったので、むしろ隣人を引っ越させたい

上記のように、無理な要求をする人は、常識的な判断や理性的な判断ができないと弁護士に思われても仕方がありません。

弁護士はあくまで法律と証拠によって主張を展開することしかできません。

不当な要求を相手に突きつけたり、証拠がいっさいない中で戦えと言われても無理があります。

また、このような人は弁護士が現実的なアドバイスや解決方法を提示しても、聞く耳を持たず、相手をするのに苦労するとも思われるでしょう。

もちろん、一般の方は法的な知識がないために、「要求できるライン」と「無理なライン」がズレてしまうことは、弁護士もよく理解しています。

しかし、あまりにもそのラインを大きく超えている依頼者は、いわゆる「モンスター」と認識され、弁護士から嫌がられます。

5)無料相談だけを利用しようとしている

法律事務所の中には、相談料を「初回無料」としているところもあります。

相談を初回無料としている法律事務所にとって、「無料相談だけを利用するつもり」「弁護士に依頼することをいっさい考えていない」という人は嫌がられます。

本来「無料相談」はあくまで相談だけの利用でも問題なく、「無料相談したらそのまま依頼しなければならない」ということはありません。

とはいえ、民間の法律事務所も商売なので、ある程度、相談後に弁護士へ依頼してくれることを想定しています。

そのため、最初から「依頼までする気はなく」、情報を抜きにきているとことが露骨な相手には、弁護士も熱心に向き合おうとはしないでしょう。

6)弁護士費用を値切ろうとする

弁護士費用を値切ろうとする依頼者も、弁護士が嫌がる相手です。

弁護士費用は、普段の生活の感覚からすれば、非常に高い印象を受けるのも無理はありません。

例えば、離婚調停の依頼では60~80万程度、訴訟に発展した場合の弁護士費用の相場は70~100万程度です。

思わず「高い!」と言いたくなる方も少なくないでしょう。

しかし、弁護士としてはサービスに見合った料金を設定しているので、「高い」と言われても困ってしまいます。

また、費用を値切ろうとする姿勢は、後に案件がうまくいった場合の成功報酬をを請求したとき、「すんなり応じてくれないのではないか」と懸念させることにもなります。

こういう依頼者を弁護士は最も嫌がります

価格が気になるなら値切り交渉はせず、法テラスを使うか、より安く引き受けてくれる他の事務所へ相談しましょう。

4.弁護士に嫌がられることのデメリット

弁護士に嫌がられるデメリット

これまで解説してきた「弁護士に嫌がられること」をすると、弁護士と良好な「信頼関係」を築くことが難しくなります。

これは単に「弁護士」が嫌な思いをするだけでなく、あなた(依頼者)にとっても明確なデメリットがあるのがミソです。

信頼関係を築けないことで、具体的に、以下のデメリットを依頼者であるあなたが被ります

【弁護士に嫌がられることのデメリット】

  • 相談や依頼を断られる

  • 満足のいくアドバイスをもらえない

  • 弁護士がなかなか動いてくれない

  • 弁護士が親身になってくれない

  • 弁護士が途中で辞任するリスクが高まる

お悩みをスムーズに解決するためにも、それぞれのデメリットを把握し、できる限り弁護士に嫌がられることを避けましょう。

1)相談を断られ弁護士が依頼は引き受けてくれない

弁護士に相談をする際、まずは法律事務所に問い合わせ、受付の事務スタッフに相談の概要をヒアリングされます。

このヒアリングの時点で相談内容、依頼者のいずれかが弁護士の嫌がるものであった場合、話を弁護士に取り次いでもらえず、相談を断られることが結構な頻度であります。

また、相談中の言動に問題があった場合にも、相談後の依頼を断られるリスクもあります。

「業務範囲外の相談」「相手が感情的で話にならない」ケースなどでは、弁護士から断られる可能性が高いでしょう。

どの弁護士も嫌がる相手の特徴はおおむね共通しているため、たらい回しにされるリスクすらあります。

2)満足のいくアドバイスをもらえない

弁護士の嫌がることをすると、相談の場で踏み込んだアドバイスをもらえないことが多いです。

弁護士は、嫌な相手からの依頼を受けることは、ほぼないです。

「依頼につながらない相談に価値なし」とみなされ、トラブル解決に向けた踏み込んだアドバイスをせず、当たり障りないアドバイスに終始しがちです。

3)依頼しても弁護士がなかなか動いてくれない

たとえ弁護士に依頼ができ、契約が成立したあとも、弁護士との信頼関係がないことによるデメリットはあります。

それは、弁護士が「なかなか動いてくれない」というデメリットです。

弁護士は、基本的に複数の案件を掛け持っており、並行して仕事に取り組んでいます。

「嫌々ながら受任した」案件は、弁護士の心理的抵抗から、どうしても優先順位を下げられてしまいます。

結果、弁護士の対応が遅い、弁護士からの連絡やあなたへの返信(レスポンス)が遅いことにも繋がります。

「早くトラブルを解決したい」「頻繁に進展を報告してもらって安心したい」という方にとっては大きなデメリットとなるでしょう。

4)弁護士が親身になってくれない

弁護士が嫌がっている場合、あなた(依頼者)に対して親身になって対応してくれないことも多いです。

依頼者の利益を大きくするために最大限の努力をする姿勢がなくなってしまうのです。

例えば、より多くの証拠を集めて、時間をかけてでも依頼者の慰謝料を引き上げようという努力です。

これにより、依頼者からすれば、自身が最初に掲げていた主張が通りにくくなることにもなるでしょう。

5)弁護士が途中で辞任するリスクが高まる

弁護士が依頼者を嫌がり、信頼関係が築けていない場合、弁護士が案件を途中で辞任してしまうおそれもあります。

実は民法では、弁護士は依頼者のトラブルが解決していなくても「辞任」できると定められています。

第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。

引用元:e-Gov「民法(651条)」

弁護士が途中でやめることになった場合、それまで弁護士とコミュニケーションをとっていた「労力」と、それまで弁護士に解決を任せていた「時間」の大半がムダになります。

もちろん、弁護士にとっても途中で案件を辞任するメリットは通常乏しく、成功報酬を得られないため、極力避けたいものです。

しかし、信頼関係が築けないクライアントとの案件を継続することの方が嫌だという弁護者多いため、途中で辞任される場合も結構な頻度で起きるので注意しましょう。

5.弁護士に嫌がられないための4つのポイント

弁護士に嫌がられないための4つのポイント

弁護士が嫌がることをすれば、弁護士との信頼関係が築けず、依頼者であるあなたにとってもよくないことがわかったでしょう。

ここから言えるのは「弁護士に嫌がられない方がよい」ということです。

「弁護士に嫌がられないようにする」といっても、弁護士はふんぞりかえっていて、依頼者がペコペコするということではありません。

弁護士と依頼者が互いに敬意をもち、良い信頼関係を築くことが大切だということです。

そこでここからは、弁護士に嫌がられず、良い信頼関係を築くためのポイントを解説していきます。

1)自分の主張が全て実現すると思わない

まず何より大切なのは、「自分の主張が全て実現すると思わない」ことです。

弁護士に相談する前は、「これくらい慰謝料がとれるだろう」「この条件で離婚できるだろう」と思っていても、現実的にはその希望が全て叶うことはありません。

もちろん弁護士は依頼者の利益のために最善を尽くしますが、相手方のあることなので、思い通りの解決になることは実務上ないのです。

そのため依頼者は、自身の希望する経済的利益や、希望する解決方法が実現できない可能性を受け入れる姿勢でいることが大切です。

譲歩や妥協の意思を見せない依頼者は嫌がられてしまうので、注意しましょう。

ちなみに弁護士は、依頼者が「自分の主張が全て実現すると思わない」姿勢でいてくれることを何よりありがたく感じます。

弁護士に嫌がられないために、とりわけ重要なことなので、ぜひ強く意識しておいてください。

2)弁護士の専門知識について口出しすぎない

弁護士が提示した解決方法や事件の筋や見通しについては、ある程度弁護士の専門知識を信じて「口出しをしすぎない」ことも大切です。

最近は解決方法や経済利益の目安について、Web上で調べられることも多く、さまざまな情報を自分で集められます。

自分で調べた情報と弁護士の説明が違った時、その点を疑問として弁護士に伝えることは全く問題ありません。

しかし、「私が調べた情報と違う、あなたが間違っている!」という言い方をされれば、弁護士も人間なので良い気持ちにはならないでしょう。

弁護士は専門知識があるだけではなく、何年もさまざまな案件に携わってきた経験や能力があります。

明らかな不信感があるわけでもなければ、専門分野には口出しせずに、依頼した弁護士を信頼しましょう。

3)相談時に嘘をつかない・隠し事をしない

弁護士に相談する際は、自分にとって都合の悪い情報も包み隠さず話すことが大切です。

弁護士は依頼者の話をもとに解決策を提示するため、依頼者の話にウソや隠し事があれば、適切な解決方法を提示できなくなってしまいます。

具体例として、父の遺産分割で揉めていた以下の事案が挙げられます。

自身の取り分が不利になる内容の遺言書を隠し持っており、「遺言書はない」と嘘をついていました。

後でそれが発覚して、遺産のいっさいを相続する権利を失ったばかりでなく、5年以下の懲役にも課されました。

このようなケースにおいては、嘘をつかれていた弁護士には助け舟を出せません。

依頼者にとって不利な情報があるなら、その状況の中で依頼者にとって1番利益が大きい解決方法を弁護士が提案するので、ご安心ください。

本記事で繰り返し述べている「弁護士との信頼関係」にもヒビがはいる行為なので、相談時に「嘘をつかない・隠し事をしない」ことを心がけましょう。

4)弁護士に求められたことはすぐに対応する

最後に、弁護士に求められたことは速やかに対応することです。

弁護士に仕事を依頼したら「あとは任せきりで、自分は何もしなくてよい」というわけではありません。

依頼後に弁護士から要求されることは、主に以下のようなものがあります。

【例:弁護士から要求されること】

  • 弁護士からの質問に答える(単純な連絡のやりとり)

  • 着手金や実費などの弁護士費用の支払い

  • 手続きに必要な書類の用意

1つ目の「連絡のやりとり」は、特に大切です。

弁護士は仕事を進めているうちに、新しく依頼者に確認したい情報が出てくるものです。

弁護士の連絡に対して返事や対応が遅くなると、弁護士も仕事をなかなか進められなくなるため、早めの対応を心がけましょう。

また、支払いへの対応が遅い依頼者に対しては、不信感が募るのを避けられません。

どうしても支払いが厳しい状況であれば、弁護士にそれを伝えるだけでも十分です。

手続きに必要な書類については、弁護士が用意するものもありますが、依頼者に調達を任されるものもあります。

例えば離婚案件であれば、夫婦の住民票・戸籍謄本や、土地建物の登記簿謄本などの財産の名義がわかる書類の用意を、依頼者が行う場合もあります。

トラブルの円滑な解決には、依頼者の協力も不可欠なので、弁護士から求められたことは、すぐに対応するようにしましょう。

6.弁護士に嫌がられた場合の3つの対処法

弁護士に嫌がられたときの3つの対処法

実際に弁護士に相談してみて「嫌がられた」と感じたり、断られた方もそこで諦める必要はありません。

弁護士に嫌がられて依頼できなかった場合、あなたにできる対処法は、嫌がられた原因に応じて3つあります。

【弁護士に嫌がられた場合の3つの対処法】

  • ほかの法律事務所に相談してみる

  • 弁護士への苦情を弁護士会窓口へ申し立てる

  • 弁護士に嫌がられる姿勢を改善する

それぞれの対処法について、詳しく解説していきます。

1)ほかの法律事務所に相談してみる

弁護士に嫌がられた場合、1番手っ取り早い対処法は、ほかの法律事務所に相談してみることです。

相談内容やタイミングが原因で弁護士に嫌がられた場合は、単にその弁護士と自分のトラブルが「合っていなかった」だけの場合も多いです。

そのため、ほかの法律事務所に相談してみれば、今度は快く対応してくれる可能性が十分に考えられます。

また、最初に相談した弁護士に「業務の範囲外」「負ける案件だから」といわれて嫌がられた場合、次は「自分の相談内容を専門にしている弁護士」に相談するのが得策です。

その弁護士が得意としている分野であれば、経験値も高いため、先の弁護士に「勝訴の見込みが低い」といわれた内容でも、快く引き受けてくれるかもしれません。

2)弁護士への苦情を専用窓口で申し立てる

弁護士に嫌がられて不満に思った場合は、その弁護士の所属する「弁護士会」の市民窓口に苦情を申し立てるという手があります。

「弁護士会」とは、各地域の弁護士を束ねている団体で、所属弁護士の「指導」や「監督」を行っています。

東京弁護士会では東京弁護士会に所属する会員に対する苦情を、「市民窓口」で受け付けています。

この窓口は、窓口担当者が電話・面接相談により、会員の業務処理の内容や報酬、言葉遣いや態度などに関する疑問や苦情等についてお聞きしたうえで、弁護士法が定める手続(弁護士の非行を理由として処分を求める場合には懲戒手続、報酬、預かり金等のトラブルは紛議調停手続)をご案内したり、弁護士の仕事を説明するものです。

引用元:東京弁護士会のコンプライアンス

このように、弁護士会が苦情を聞いてくれて、その内容に応じて適切な手続きを案内してくれます。

弁護士会は各都道府県ごとに設置されており、「市民窓口」もそれぞれの弁護士会ごとに設置しています。

例えば、東京の弁護士に苦情を入れたい場合は「東京弁護士会」の市民窓口に問い合わせましょう。

「嫌がるのは分かるけど、それにしても失礼だった」などの不満がある方は、この「市民窓口」に苦情を申し立ててみてください。

全国の弁護士会一覧

3)弁護士に嫌がられる姿勢を改善する

本記事で解説したように、弁護士が嫌がる原因は、相談相手(依頼者)である”あなた”の姿勢にあるケースも少なくありません。

【弁護士が嫌がる相手の特徴】

  • 感情的で、冷静に話ができない

  • 弁護士を信頼していない・態度が横柄

  • 過剰な要求をする

  • 弁護士費用を値切ろうとする

上記のような特徴に思い当たる節がある方は、その姿勢を改善するとよいでしょう。

なにも弁護士のご機嫌とりをして、下手にでるということではありません。

弁護士に最低限の敬意を払い、互いに信頼関係が築けるような態度・姿勢でいればよいのです。

依頼者の姿勢に問題がある場合は、ほかの法律事務所に相談しても、同じように嫌がられ、いわゆる「たらい回し」状態になることもあります。

「たらい回し」状態になれば、トラブルの解決が遅れますし、依頼できる弁護士の選択肢がどんどん狭まっていきます。

次に相談する弁護士とは良い関係が築けるよう、自身の姿勢を見つめ直してみてください。

7.嫌がられる筋合いなし!弁護士が助けてくれないとき

弁護士が助けてれくないときの対処法

本記事では、「弁護士も人間なので、嫌がることがある」と述べてきました。

しかし、中には嫌がられる筋合いもなく、本当に困っている方が弁護士に助けてもらえない状況も存在します。

いくら「お金にならない」「依頼者が気に入らない」といっても、連絡を全くよこさなかったり、依頼者の利益のための業務を怠るようなことは、弁護士がしてはいけないことです。

そのためここからは、弁護士に問題がある場合に、「悪徳弁護士」から自分自身を守る方法を解説していきます。

1)セカンドオピニオンを求める

「セカンドオピニオン」とは、最初に相談した弁護士と別の弁護士に意見を求めることをいいます。

医療の現場でよく耳にする言葉ですが、弁護士の無料相談についても同じように使われています。

弁護士の言っていることが信用できなかったり、案内された料金が適正かわからない場合などに、セカンドオピニオンは有効です。

セカンドオピニオンでは、その弁護士に同じ相談をしてみるだけでなく、前の弁護士とのやりとりや見積書を提出し、その内容が適切かを検証してもらうこともできます。

実際、セカンドオピニオンを希望する割合は全体の51.9%で、決して珍しいことではありません。

特に無料相談であれば、別の弁護士に相談しても相談料がかさむことがありませんし、「相見積もり」のような意味合いでも役に立つでしょう。

最初に相談した弁護士に不信感がある方は、別の弁護士にも相談してみて、得られた情報やアドバイスを比べてみるとよいでしょう。

2)担当弁護士を「解任」して他の弁護士を探す

信頼関係が築けない場合、弁護士がいつでも案件を辞任できるのと同じように、依頼者も弁護士を「解任」できます。

弁護士にやる気がない、連絡をしてこない、交渉が進展している様子がないなどの場合は、早めに解任して次の弁護士を探した方がよいでしょう。

弁護士に解任の意思を伝えて、あとは弁護士側に辞任の手続きをしてもらう流れが一般的です。

「解任」も弁護士と依頼者間の合意は必要ないので、弁護士からの返信もない状態であれば、一方的に解任を告げても問題ありません。

ただし、委任契約を途中でやめる場合の精算方法については、契約書で定められた内容に従うしかないので注意しましょう。

3)「紛議調停」や「懲戒請求」を申し立てる

先の項目で、弁護士への苦情は、その弁護士が所属する「弁護士会」の市民窓口に申し立てられると述べました。

実は、弁護士会は苦情を受け付けているだけではありません。

弁護士側に明らかな問題があった場合は、「紛議調停」「懲戒請求」という2つの手続きを行っています。

手続き

内容

紛議調停

弁護士会が間に入って解決の

道を探る調停の場を設ける

懲戒請求

弁護士に反省を求め、戒める処分

「戒告」や、重い場合「業務停止」

や弁護士の資格を剥奪したりする

弁護士が「契約した報酬よりも後出しでそれを超える報酬を請求してきた場合」のように、弁護士側に「品位を失うべき非行」があった場合などでは、紛議調停・懲戒請求ができます。

依頼者個人がいきなり申し立ての手続きをするわけではないので、まずは弁護士会に問い合わせます。

全国の弁護士会一覧

ただし、不当な懲戒請求は、「不法行為(民法709条)」になり、申し立てた依頼者は損害賠償義務を負うだけでなく「虚偽告訴罪(刑法172条)」として最大10年以下の懲役刑が科されるリスクがあることには注意しましょう(最判平成19年4月24日)。

こういった背景からも、軽い気持ちで申し立てる手続きではないため、やはりまずは弁護士会に問い合わせて、手続きについて相談してみてください。

8.「マチベン法律相談」を利用してみるのもおすすめ

マチベン法律相談のバナー

嫌がられることを心配せずに、気軽に弁護士に無料相談できるサービスとして、「マチベン法律相談」を、最後に紹介しておきます。

「マチベン法律相談」は、スマホから弁護士に無料相談できるQ&Aサービスです。

お悩みをテキスト入力し、質問を投稿すればあとは待つだけ。

弁護士が丁寧に回答をくれます。

【マチベン法律相談のメリット】

  • LINEに友達登録するだけで相談できるのでとても手軽!

  • スマホ完結なので気軽に相談できる

  • 24時間いつでも、何度でも質問できる

  • AIが質問作成をアシストしてくれる

  • それなのに「完全無料!」

これまでの説明から、「大丈夫だとは思うけど、万が一嫌がられたらどうしよう…」と不安になった方もいるかもしれません。

「マチベン法律相談」では、上記のような心配がなく、誰でも気軽に相談できます。

というのも、スマホ完結で非対面な上、質問の作成をAIがアシストしてくれます。

言葉遣いまでAIが直してくれるので、弁護士の顔色を伺う必要はありません。

24時間どんな場所からでも、また何度でも相談できます。

完全無料で使えるので、法律事務所へ行く前に一度ぜひご活用ください。

「マチベン法律相談」で質問する

よくある質問

「弁護士が嫌がること」等に関し、よくある質問をまとめました。

Q

嫌がられていると、弁護士は冷たいですか?

弁護士があなたを嫌がっている場合、弁護士の対応は基本的に冷たくなるでしょう。弁護士が冷たい態度をとっている原因としては以下の可能性が考えられます。

なお、いずれにせよ、その弁護士を「冷たい」と感じる場合には、その弁護士に依頼しない方がよいでしょう。依頼する際には、弁護士との信頼関係が大切だからです。

Q

弁護士のやる気がないようなのですが、途中でやめさせることはできますか?

弁護士のやる気がない場合、その弁護士を途中でやめさせることはできます。弁護士と依頼者の関係は「委任契約」であるところ、委任契約では契約途中の解約が自由だからです。そのため、トラブルが解決していなくても、やる気を感じられない場合には、その弁護士を途中で解任できるのです。ただし、報酬の精算などについては依頼寺の契約書の取り決めに従うことが多いので注意が必要です。

Q

嫌がられる筋合いはありません。その弁護士は「悪徳弁護士」なのでしょうか?

一概に「悪徳弁護士」とはいえません。あなたと弁護士の双方がした実際の言動次第で、悪徳かどうかは決まります。仮に悪徳弁護士と感じるなら、弁護士に対する苦情をその弁護士が所属する「弁護士会」に申し立てられます。「弁護士会」に問い合わせて詳しい状況を伝え、適切な対処を案内してもらいましょう。詳しくはこちらの項目で解説しています。

まとめ

本記事では、弁護士が嫌がることを、「相談内容・状況」と「相談相手」という2つの要因に分けて解説してきました。

特に、相談相手(依頼者)に問題がある場合、弁護士は「この依頼者とは信頼関係を築けない」と感じ、相談や依頼を嫌がることが少なくありません。

弁護士に嫌がられないためには、「自分の主張が全て実現すると思わない」「目の前の弁護士に最低限の敬意と信頼をもって、冷静に対話する」ことが何より大切です。

弁護士に嫌がられる要素を極力なくすことで、弁護士と良い信頼関係ができ、円滑にトラブル解決しやすくなるでしょう。

本記事で解説したことを参考にして、円滑なトラブル解決に役立ててください。

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